「4・27文科省通知」の撤回を大阪弁護士会が勧告!
2024年3月22日、大阪弁護士会が、いわゆる「4・27文科省通知」(2022年4月27日に文部科学省が初等中等教育局長名義で発出した「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」)に関して勧告を出しました。
勧告では「申立人児童らのインクルーシブ教育を受ける権利を侵害し、不当な差別に該当するおそれがある」として、この通知の中の「特別支援学級に在籍している児童生徒について、原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において授業を行うことを求めている部分」を撤回するよう求めています。
これは、枚方市・東大阪市の子どもと保護者らが2022年10月31日に行った人権救済申立に応えたものです。
3月26日には、この勧告に関して、大阪弁護士会による記者会見が大阪弁護士会館で、申立人らによる記者会見が大阪府庁の大阪教育記者会で行われました。
重要なニュースですので、こちらに情報をまとめておきます。
【1】大阪弁護士会の勧告書原文
大阪弁護士会のウェブサイトから閲覧・ダウンロードできます。
【2】ニュース記事一覧(順不同)
NEW 【深層解説】特別支援教育巡る文科省通知に撤回勧告 論争の背景(教育新聞)
時代を先取っていた大阪「ともに学び、ともに育つ」教育 文科省通知は「不当な差別」弁護士会が撤回勧告(THE PAGE)
特別支援学級の児童めぐる文科省の通知…大阪弁護士会は撤回するよう勧告「障がいのある児童らが平等に教育を受ける権利を侵害している」(MBSニュース)
特別支援学級に通う児童は「週に半分以上は支援学級で」 文科省の方針は権利の侵害と弁護士会が勧告(関西テレビ)
「特別支援学級の児童分離は人権侵害のおそれ」 文科省の通知めぐり大阪弁護士会が撤回勧告 申立人の親子ら会見「お互いを認め合える環境で育ってほしい」(ABCニュース)
「障害児の教育分離は人権侵害」 弁護士会が文科省通知の撤回求める(朝日新聞デジタル)
「障害児の教育分離は人権侵害」 弁護士会が文科省通知の撤回求める(朝日新聞デジタル、有料記事)
特別支援児童の授業制限、撤回を 大阪弁護士会が文科相に勧告(毎日新聞)
週の半分以上を特別支援学級で受けるように求めた国の通知「人権侵害のおそれ」…大阪弁護士会が勧告(読売新聞オンライン)
文科省通知は「不当な差別」 大阪弁護士会が撤回勧告(共同通信)
【3】勧告に対して保護者と子どもたちからの声(3月26日の記者会見で発表)
1.
大阪府に暮らす住民として、支援級に在籍する子は1日のうちの半分以上を支援級で過ごすということが、大阪においては支援教育の後退になること、ともに学びともに育つの大切さを認めてもらえたこと、感謝しかないです。
全国の中で今まで1日中支援級で過ごすことになっていたところに関しても、その子その子個人個人のニーズに合わせて時間数は柔軟に対応してもらえるようになるといいなと思います。
2.
私はみんなの願いが届いて、全国の子供が一緒に楽しく通える学校で学べるよう一日も早くなることお願いしたいです。
誰もとりこぼされない社会になって欲しい。
3.
大阪弁護士会の皆様、撤回勧告をありがとうございます。
分けて特別な支援を、となると、障害のある子ども達とそうでない子ども達の両方から、お互いを知る機会を奪ってしまう事になります。
共に過ごす経験は、教科書では学べない、大切な事だと思います。
共に学び共に育つ、日本がそんな素敵な国になる為の大きな一歩では、と思います。
4.(15歳)
大人が色々決めてしまうのが疑問です。僕達は「普通教室」と「支援教室」を自由に行き来する権利があると思うし、子ども(本人)の意見をもっと聞いて欲しい。
5.
4.27通知は「共に学び共に育つ」から逆行してしまうと感じていたので、人権侵害だと認められて良かったです。
この通知では支援級の子供達だけでなく、子供達全員が「人の多種多様性」に触れる機会を奪われます。支援級から離された普通学級で教育を受けたきた私は「分ける教育に多種多様な人との出会い」を奪われた一人だと思っています。大人になっても障害者の方との関わり方に戸惑います。こんな大人を作らないでいただきたいです。
発達障害持ちの息子やその友人達は、同じ教室で共に学び共に育ってきました。彼らを見ていて感じるのは、他者を自然に受け入れられる寛容性や受容性は共に育つ中で培われるという事です。どうか「共に学ぶ共に育つ」場を守り続けていってください。
6.
この勧告文では触れられていないが、共に学ぶ事は、通常学級の子ども達にとってもたくさんの利益をもたらしているということにも目を向けて欲しい。
7.(6歳 新一年生)
寂しいし、一緒にいなきゃ遊べないし仲良くなれない。
でも、お友だちが「1人でいたい」って言うなら、寂しいけど仕方ないかな。
8.(摂津市 通常学級在籍児の保護者)
この通知によって、特別支援学級在籍の子どもは、特別支援学級時間数を週の半分以上になるようにしないといけないという圧が大阪府の自治体にかかり、子ども、保護者を苦しめていると思います。ぜひ、この通知の撤回によって、この圧から自治体を解放し、子ども、保護者に寄り添っていただきたいと思います。
現に、この文部科学省4.27通知で、令和5年度より支援級退級、通級指導教室に変わったお子さんもいますが、令和4年度より支援学級時間数が増え、より分けられたお子さんもいます。
そして、令和5年度より通常学級での特別支援学級の担任による入り込み支援がほとんどできない体制にもなっています。
通常学級での支援は、特別教育支援員でとのことですが、特別教育支援員や学習サポーターも財政面、人材の問題で必要な人数を確保できていなく、参観時など通常学級の保護者も通常学級担任だけでは難しい場面を目の当たりにしたりしています。
また、支援学級在籍の子どもが通常学級で学びたいと思っていても、通常学級での支援学級の担任の入り込み支援がほとんどなく、合理的配慮、支援が受けられないため、勉強が難しくなっているのもあると思いますが、しんどくなり、支援学級の時間が長くなっているお子さんもいると聞いています。
子どもが通常学級にいたいと思っていてもおれない環境、どうにかしてもらいたいと思います。
支援が必要な子どもの保護者が、特別支援学級、特別支援学校を求めているケースが多くなっているのは、我が子が通常学級でやっていける環境だと到底思えないのも要因の1つだと思います。
この文部科学省通知を受けて、通常学級での特別支援学級担任の入り込みはなく、一人で通常学級でやっていけると思う、子ども、保護者はほとんどいないと思います。
子どもの思いに寄り添える学校であってほしいと思います。
子どもの思いに寄り添える学校、それは、支援が必要な子だけでなく、通常学級在籍の子、すべての子供たち一人一人のニーズを踏まえた学びの充実に向けて、通常学級の在り方を模索していかないとどうしようもないところにきているのではないでしょうか?
通常学級在籍の子どもも今の通常学級での先生からの一斉授業を楽しんでいる子ども、退屈している子ども、授業についていけてない子ども、そもそもの環境でしんどい子どもなど、様々だと思います。
今までの先生からの一斉授業、枠にはまった環境などは、支援学級在籍、支援学校在籍の子どもが受け入れられないだけでなく、すべての子ども、それぞれの思いに寄り添えていないのではないでしょうか?
すべての子どもの思いに寄り添える学校、日本の教育であってほしいと思い、この文部科学省4.27通知が子どもに寄り添えているか今一度、考えていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
9.(申立人とそのお子さま)
皆さんのご意見に頷くことばかりです。以下は9歳ダウン症児の子どものコメントです。
「支援も3年2組も大好き。どちらか片方だけとか、少しの時間しか居られないとか、決められるのは嫌だ。支援と3年2組の両方に居たい。お友だちと一緒がいい」とのことでした。
ちなみに先週、体調不良で一日休んだら、「3年2組の友だちに会いたい、明日は学校行く」と涙目で言っていました。
子ども本人の気持ちを第一に、将来を見越した親や先生の意見も踏まえて個々に合った対応をしてもらえるシステムになっていってほしいと思います。
10.(枚方市の申立人)
従来枚方市(大阪府)で行われていた支援が適切であり、今回変更しようとしたことはインクルーシブ教育において逆行と判断がなされたことは、保護者である私自身が感じていたことと一致しており、そのように判断いただけたことを非常に嬉しく感じております。
それぞれの子どもにとって一番望ましい選択肢があることが、子どもの一番の成長につながると思います。現在の枚方市の進め方を見ていると、今後もそれが守られるか正直不安です。
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