北口昌弘さんをしのんで
今日8月15日は、障害当事者として「ともに学び、ともに育つ教育」の推進に人生をかけて取り組んでいた北口昌弘さんの命日です。
2017年に他界されてから5年がたちますが、彼の存在がいかに大きかったかを、いまも日々、感じているところです。
3年前に発行した彼の遺稿集『共に学び 自己実現へ』はまだ残部があり、1800円(送料込み)で販売しています。ご希望の方は私・合田までご連絡ください。私の「プロフィール」のところからメールが送れます。
命日にあたって、北口さんが遺した文章を紹介したいと思います。2016年に書かれた原稿で、花園大学の社会福祉学会で発表したもののようです(遺稿集には未収録)。
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『障害のある人が子どもの頃から地域社会で共に生きるには』
研究発表の目的
2016年7月に神奈川県の障害者施設で起きた殺人事件は、私たち障害者に命の危険を感じさせるできごとであったと同時に、地域で障害のある人が当たり前に暮らす世の中になっていないという現実に直面しているということを考えさせられることになってしまった。このことを通じて、障害のある人が子どもの頃から地域社会で共に生きることを考えていきたい。
1.百人百様の生き方を認め合う
障害があると、できないことがあり、できるようになるには時間がかかる。人間の発達において、見よう見まねで物事を覚えていくなかで、障害のある人が子どもの頃から障害のない人と過ごすなかで、見よう見まねで物事を覚える機会が生まれる。できるようになるのに時間がかかるけれど、保護者や学校の教員などの関わる人は、すぐに物事を習得することができないと決めつけて、障害のない人との関わりをやめさせることは、当たり前に生きることを奪うことになり、差別だと考える。障害のある人の生きる力をつけることは、周りの人々が見守りながら、じっくり待つことが大切である。障害のある人が子どもの頃から、地域社会の中心で生きることは、全ての人が生きやすい世の中になると考える。
2.地域でいきいきと生きるために
私たちは、障害者である前に1人の人間として、多くの人々と関わりながら生きていく。障害があると、自分の力で周りに働きかけることが難しいので、教育や社会福祉に関わる人が、働きかけることを応援することが大切である。障害のない人と多く関わる機会を作ることにおいて、地域にある公民館や公共施設において障害のある人が障害のない人と共に管理運営できることが大切である。
日本は、災害が多い国なので、災害対策の中心に障害のある人の支援を考えることが重要であり、障害のある人が災害対策に関わることにより、災害に見舞われても、安心して暮らせる社会を作ることができる。地域で暮らす形態においても、障害のある人とない人が共にグループで暮らせるような居住形態を作ることが大切だと考えている。子どもから高齢者まで障害のあるなしに関わらず、さまざまな人と関わりあえるようにすることが、安心して地域に住むことにおいて不可欠である。障害者が役に立たない人間にさせられる要因は、障害のない人との関わりをさせなかった支援者に問題があると考えている。障害者が障害のない人と関わるにあたり、住み慣れた地域の中心でいきいきと生きることができるように、さまざまな支援をすることが、インクルーシブ社会を形成する社会福祉関係者に不可欠である。支援することで障害のある人がいきいきと活躍できる社会を作ることは、全ての人にとって生きやすい社会になる。障害があると、社会経験が少なくなってしまう傾向にあるため、障害のある人が多くの経験ができるように支援することが、社会福祉関係者に求められている。
社会福祉関係者は、障害のある人の生きにくさを、多くの人に啓蒙して、障害のある人が生きやすい地域社会を作ることが大切である。
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