公教育計画学会から「大阪府教育基本条例案の撤回を求める緊急声明」
知り合いの研究者の方が参加している公教育計画学会が、「大阪府教育基本条例案の撤回を求める緊急声明」を出しました。
教育基本条例案に反対する声明、アピールはたくさん出されていますが、大阪の「ともに学び、ともに生きる教育」が破壊される危機を訴えているのは初めてだと思います。
ぜひ、みなさんにお読みいただきたく、全文を以下に掲載します。
原文のPDFファイルはこちら
http://koukyouiku.la.coocan.jp/oosakahukihonjyoureiannotekkai20111206.pdf
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大阪府教育基本条例案の撤回を求める緊急声明
公教育計画学会
2011 年12 月6 日
11 月27 日に開票された大阪府知事および大阪市市長選挙結果は、いずれも橋下徹前大阪府知事が率いる「大阪維新の会」が勝利した。その結果、大阪府議会に提出されている大阪府教育基本条例案(以下、条例案)は、多くの問題点を内包しており、条例案に反対するかなりの民意が存在するにもかかわらず、成立の可能性が生まれてきた。
子どもの学習権保障、教育の機会均等、共生教育(インクルーシブ教育)、公教育の無償化などを基本原則とすべき公教育の新たな仕組みや内容を計画的に作り出すことを目的として研究活動を行っている本学会としては、この条例案の成立を看過することができない。改めて、条例案における基本的問題を指摘することを通して、本学会は、公教育を過剰な競争主義原理により一元化的に管理することで、共生社会づくりとは異なる格差・競争社会につながる危険性のある条例案の撤回を求める。
なお、本学会は、大阪府における国旗・国歌条例についても過日、批判声明を出している。
条例案の基本的問題
1.日本国憲法ばかりでなく、子どもの権利条約、教育基本法、地方教育行政の組織および運営に関する法律などの現行法に反する内容に満ちている。
たとえば、条例案には、基本的人権に抵触するような規定、愛国心指導の強制、教育委員の知事独断での解任、教育における競争至上主義の徹底などが含まれている。
2.「教育基本」条例と銘打っているが、その内実は教員管理条例であり、名称と実体が不一致である。しかも、その教員管理の在り方は、競争主義的であり管理主義的な構成になっている。条例案は、教員管理の強化を通して、公教育における競争至上主義を徹底することを企図するものである。
3.自治体レベルでの公教育の基本的な在り方を知事が一方的に定め、それを現場に達成させるやり方は公教育の政治的利用に他ならない。現行教育委員会制度との整合性もない。政治的党派性をもつ独任制の知事が、直接的に、教育行政へ関与することは許されない。共生共育を求める教育では、多様な民意を反映することが肝要であり、十分な協議を尽くして地域の実態に合った教育を作りだすことが重要である。
4.教育行政に政治が関わりえなくなっている(前文)という認識は、誤りである。敗戦後から現在に至るまで、公教育に対する政治的関与の史実は多数ある。そうした史実から明らかなように、教育行政への政治的関与によって公教育の基本原則が歪められ、教育が差別的・選別的な機能を果たしてきたことを見逃してはならない。今、政治に求められるのは、教育を首長支配するための仕組みづくりではなく、教育行政にどのように民意を反映する仕組みを構築するのかということなのである。
5.点数至上主義あるいは競争至上主義的な教育は、教育格差を拡大させ、教育における差別を拡大させていくのである。その結果、貧富の世代間継承と拡大ももたらされる。それはまた、人々の結びつきを弱めることで、これまで大阪の地で実践され全国的にも評価の高い共生共育など、多様性を尊重した実践の蓄積を破壊することになる。まさにこの条例案は、首長・議員選挙に限定された民意を盾にしながら、実際に教育に対して民意を反映する仕組みと教育実践の蓄積をことごとくつぶしていくものと断ぜざるを得ない。
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