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2013年2月の記事

2013年2月27日 (水)

知られざるバリア

 3年前から、私の妻は、地元の図書館が利用できなくなった。

 というのは、妻には高所恐怖症があって、4~5階より上の階にはコワくて上れない(ついでに、低所恐怖症というのか、地階もかなり苦手)。図書館は以前は区民センターの4階にあったのだが、センターの新築にともなって8階に移ったため、行けなくなってしまったのだ。

 まぁ、図書館に行けなくても死ぬわけじゃない。それに、図書館には、障害のために行くのが難しい人のために本を郵送してくれるサービスがあるから、本を借りられないわけでもない。

 しかし、精神障害と肢体不自由をもつゆえに、街なかに出るのも、乗り物に乗るのもしんどくて、家からだいたい半径500メートル圏内で生活している彼女にとって、近所の図書館は数少ない行ける場所。ここで本をながめるのが、ささやかな楽しみだった。それを失ってしまったのは、すごく寂しい。

 この区民センターは、“バリアフリー”ということになっている。確かに館内に段差はなく、大型のエレベーターがついていて、物理的には誰もが図書館に行ける。しかし、妻のような人から見れば、どうしても超えられないバリアが高くそびえたっているのだ。

 だからといって、じゃあ、図書館を5階以下の場所につくってくれと要望できるかといえば、それは難しいだろうと思う。ただ、そういう心理的なバリアがあるために、公共施設を使えない人がいるということを、みなさんに知ってもらいたい。

2013年2月24日 (日)

感動の涙におぼれて、怒りを忘れてはならない~マンガ『ひまわり!!』を読む

Himawari  

 読んでいて、やりきれない怒りがわいてくる。レディースコミック誌「BE・LOVE」(講談社、月2回刊)に連載中の『ひまわり!!』。作者は愛本みずほさん。

 このマンガは、知的障害のあるシングルマザーの子育てをテーマにした『だいすき!!』(香里奈さん主演でテレビドラマ化されたので、ご存じの方も多いだろう)の続編。障害のある母親(福原柚子)に育てられた娘、“ひまわり”が今回の主人公で、いま、障害のある人の家族の結婚問題を取り上げている。

 ストーリーはこうだ。

 スポーツクラブで働く福原ひまわりは、職場の先輩の新井優也から求婚されるが、自分の母親に障害があることをなかなか打ち明けられない。ひょんなことから、そのことが優也に知られてしまう。でも、優也はあたりまえに受け止めてくれて、思いは変わらないと言う。

 ところが、優也を女手ひとつで育ててきた母親が、結婚に反対する。「親が知的障害だなんて…」「産まれる子にも障害があったらどうするの!」「家族に障害者がいるってことは大変なことよ。どんな理不尽なことがあるかわからないのよ」…。

 そのことを知ったひまわりは悩み、母親の弟の妻、夏梅のもとを訪ねて、「結婚する時、不安じゃなかった?」と聞く。夏梅は「そんなことで揺らがないくらい、私が強くなろうと」思ったと話し、ひまわりは「私も強くなろう」と思う。

 反対しても息子の決意が変わらないので、優也の母親は、ひまわりに会いに来て、結婚をあきらめるよう迫る。それを聞いた優也は怒り、「母さんが許してくれないなら、オレは母さんと縁を切る」と母親に告げる。

 「あたしのせいで」と自分を責める、ひまわり。そんなとき、優也の母親が骨折して入院するが、優也は「オレは縁を切るって言ったんだ」と、会いに行こうとしない。でも、実は心配でたまらない優也の気持ちを思い、ひまわりは胸を痛める。

 ひまわりが実家に行くと、母親の柚子は、娘が結婚するというので有頂天。思い悩んでごはんものどに通らないひまわりに、うれしそうにウェディングドレスの話をする。ひまわりはつい、口走ってしまう。「もう、やめてよ。だれのせいで、あたしが…」。

 事情を聞いた柚子は、悲しい顔で「あたしの…せいだ…よね」と言い、「お母さんのこと、捨てていいよ」「お母さんがいたら、ひまわりはしあわせになれないでしょ。だから、お母さんはいないことにしていいよ」「ごめんね、ひまわり」と頭を下げる。号泣するひまわりと柚子。

 そして、一大決心をしたひまわりは、入院中の優也の母親の病室を訪ねるが…。

 ──というところで、最新話(2013年3月1日号掲載)は終わっている。

 このマンガは、あくまでもフィクションだ。しかし、現実にいまの社会で、障害のある人やその家族が結婚しようとするとき、よく経験することをリアルに描いているといえるだろう。

 だから、読んでいて、どうしようもなく腹が立つ。おたがいの合意にもとづく結婚なのに、なんで、障害のある側だけが一方的に負い目を負わされなけばならないのかと。

 親に障害があるというだけで、なぜ、当然のごとく結婚を反対されるのか!

 「産まれる子にも障害があったらどうするの!」って、障害があったら悪いのか!

 「どんな理不尽なことがあるかわからない」って、あんたがしていることが理不尽だ!

 どうして、障害のある人の側だけが「強くなろう」と思わないといけないのか!

 自分は何も悪くないのに、なぜ、愛情をこめて育ててきた子どもに「捨てていいよ」と言わなくてはならないのか!

 ここでよみがえってくるのが、私たち夫婦の結婚前、おたがいの親どうしが会って、上から目線をとり続ける私の親に、彼女の親が一生懸命に頭を下げていたときの居心地の悪さだ。本来、私の方が「娘はやれん」と言われたって、おかしくないのに…。障害のない側は、ただ障害がないというだけで、なんでそんなにエラそうにしているのか。

 ストーリーはおそらく、優也の母親が最終的に結婚を認め、みんなで泣くというハッピーエンドに至るだろう。マンガはそれでめでたし、めでたしだが、目の前の現実はどうか。感動の涙におぼれず、私は、ここで抱いた怒りをずっと燃やしていこう。障害があるというだけで、ふつうに結婚することさえ拒もうとするこの世の中に、ええかげんにせえよ!とツッコみ続けるために。そして、いつか、障害がある人の結婚がふつうの日常になって、マンガのネタにならない日がやって来てほしいと思う。

 このマンガで、心に深く残ったシーンがある。結婚をあきらめさせようとする優也の母親に「お気の毒」「かわいそう」と言われて、かちんと来たひまわりがこう言い放つ。

 「母は一人で私を育てられません。だけど、この世界のだれが一人で子どもを育てられるんですか? みんな何かを手伝ってもらいながら育てるんじゃないんですか? 私の母親は手伝ってもらうことが他の人より多かったと思います。だけどそれは恥ずかしいことですか!? 私はたくさんの人に助けられてここまで育ててもらいました。それは、私の誇りです。母も私も、哀れまれる筋合いはありません」

 いいぞ、ひまわり!! そのことばに、おっちゃんは勇気づけられたよ。

Himawari1

ひまわり!! それからのだいすき!!(1) (BE LOVE KC)

Daisuki1

だいすき!! ゆずの子育て日記(1) (講談社コミックスビーラブ (1166巻))

2013年2月18日 (月)

ブログを訪ねていただいたみなさまへ。ぼちぼちと再開します。

 ブログを訪ねていただいたみなさまへ。長いこと更新できていなくて、すみません。

 もうひとつのブログ(大阪発「ともに学び、ともに生きる教育」情報板)は何とか更新していたのですが、こちらにやって来ることが、なかなかできませんでした。

 それは、このブログのメインの話題である妻との生活の波風に追われて、気持ちの余裕を失っていたことによります。いまも波風はやむどころか、激しくなっていますが、やはり私はライターです。伝えたい思いをもう一度、書いていこうと決めました。

 離れていた間にコメントを寄せていただいたみなさま、ありがとうございます。なかでもうれしかったのは、以前の私たちと同じく、結婚を反対されている方からの「励まされました」「諦めずに、何度も親と話し合います」というコメントでした。その後、どうなりましたでしょうか。ご返事する時期を逃してしまいましたが、気にかかっています。

 …と、ここまで書いていたところで、障害当事者である「はなこ」さんから、婚約されたといううれしいコメントが届きました。
http://massugu.way-nifty.com/blog/2008/01/post_add3.html#comment-76417915

 一口に「障害」といっても、そのかたちは人それぞれで多様です。私のパートナーの場合は、精神にも身体にも状態に波があって、予期せぬ変調が突然やってくるので、毎日がジェットコースタードラマのよう。いちばんつらいのは本人なのですが、いっしょにいる私も、やるべき仕事が手につかなかったり、大切な集まりや約束に出かける直前になって行けなくなったりがしょっちゅう。そんなことで、いろんな方にご迷惑もおかけしてきました。

 のんきで楽天的な私ですが、何かをしようという意欲がなえそうになったこともあります。

 でも、やっぱり、私は妻と暮らしていて幸せです。障害のない者とある者との夫婦はまだまだ少数者なので(多数者になっていってほしいと思いますが)、それゆえ、世間によくある夫婦では経験できないような、おもしろいことにいっぱい出会えます。妻の目線によりそってこそ見える、味わい深い景色があります。一度しかない人生を、いやおうもなくおもしろく生きられるのは、なかなかおトクだなぁと思います。

 そして、いま障害や病気と縁のない人でも、明日、何が起こるかはわかりません。人生は、元気にバリバリ働いているなんていうのは、むしろ、まれな状態で、思うにまかせぬ状況を抱えて、オロオロとさまよっているのがあたりまえのすがたでしょう。そんなとき、信頼で結ばれたパートナーがいれば、乗り切っていく力になります。ここで大切なのは、おたがいの生きる価値観が一致しているかどうかであって、障害のあるとかないとかは全く関係がありません。障害があるからという理由で、結婚に反対する人たちには、このことを強く言いたいです。

 これからは、ぼちぼちペースですが、更新していきます。みなさま、どうかおつきあいのほどをお願いいたします。

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