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2011年6月19日 (日)

Tくんが遺してくれたもの。

 僕の恩人である小学生のTくんが突然、天国に旅立った。享年8年6カ月だった。

 彼は、身体はほとんど動かず、ことばを話さず、医療的ケアが日常的に必要な障害をもちながら、地域の幼稚園、地域の小学校で学んできた。

 そのまちでは、彼のような“重度”の障害のある子が地域の学校に行くのは、前例のないことだった。ご両親は周囲に共感する人たちの輪を広げ、9880筆もの署名を集めて教育委員会とねばり強く話し合い、地域の子どもたちとともに生きる道を切り拓いた。

 「恩人」というのはなぜかというと、Tくんが通っていた幼稚園の運動会を取材させていただいたことがあって、そこで見た彼と他の子どもたちのかかわりが、僕が今、ライフテーマにしている「ともに学び、ともに生きる」ことに確信を与えてくれたからだ。

 長くなるが、その時の様子を、当時、豊中市の『「障害」児・者の生活と進路を考える会』の通信に書かせていただいた記事から引用しておきたい。

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 と、Tくん(注:原文では実名)を見つけて、ひとり、ふたりと友だちが寄ってきた。子どもというのは、やっぱり、えらいものだ。言葉が交わせないことなんかモノとせず、バギーに乗ったTくんの顔をのそぞきこみ、ほほをつっついて話しかける。手を握って笑いかける。Tくんの表情が一瞬にして明るくなった。僕が感じてしまう気おくれは全くなく、ごく自然にコミュニケーションが生まれている。

 そして、子どもたちは好奇心いっぱいだ。バギーについている折りたたみ式の日よけが、おもしろくてしかたがない。たたんだ状態のものを何度も広げて遊ぶ。のどについたカニューレにさわり、吸引用チューブをしげしげとながめる。バギーの持ち手を握って押そうとする。純粋に興味をひかれるから、ふれてみたい。あわてて先生に止められていたが、はれものにさわるようにしている大人たちより、ずっといいスタンスに見えた。

 プログラム前半で、Tくんは3種目に出場したが、この日はすさまじい炎天下。暑さが苦手なので、少々ばててきた。日陰でAさん(注:お母さん、原文では実名)があおいでやっていると、ここにも、友だちがやってくる。誰に何もいわれないのに、Aさんに代わって、うちわでTくんを一生懸命あおぐ。君たち、やさしいなぁ。目をひかれたのは、Tくんをあおいでやりながらも、合間でうちわの向きを変えて、自分のこともあおいでいる。疲れてきたら、ころあいを見てしっかり休んでいる。「たまには自分であおげよー」と、Tくんの手にうちわを持たせようとする(これは失敗したけど)。一方的に「してあげる」のではなく、無理せず、おたがいに支えあえばいいのだと、感覚的にわかっているのだ。
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 6月16日(木)にあった告別式には、会場に入りきれないほどの弔問客が訪れていた。受付を手伝っていたのは、Tくんのお母さんが地域で立ち上げた、さまざまな障害をもつ子も、そのきょうだいも、おとなも学生もいっしょに集う場、「病児・障がい児の地域生活を支える会」のボランティアスタッフだった。

 友だちの小学生が何十人も来ていた。子どもたちは顔をくしゃくしゃにして、「T、ありがとう!」「T、バイバイ!」と、棺のなかに横たわるTくんに叫んでいた。それが、彼が地域でつくりあげてきた共生の関係の豊かさをものがたっていた。

 人をひきつける愛くるしい笑顔と、地域の催しで自分の出番の時に見せるサービス精神が魅力的だったTくん。まだまだ、人生でやりたいことがあっただろう。あまりにも早い旅立ちが無念でならない。

 しかし、Tくんは8年あまりの短い人生で、このまちの風景を確実に変えた。どんなに“重度”といわれる障害があっても、地域のなかであたりまえに生きられる社会へ。彼が遺してくれた人と人のつながりを、僕たちは、もっともっと大きく育てていこう。

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コメント

こんにちは。自立生活センターおおさかひがしの「ひがしism」通信No.50で合田さんの文章を読ませていただき、それがきっかけでこちらのブログも読ませていただき、深く感動し、とても大事なことを教えていただきました。ちなみに、わたくしは大学で人権を若者たちに教える仕事をしているのですが、まだまだ勉強が足りないと思っています。
今後も、素晴らしい活動とそれに基づく発信を続けてくださるように期待しています。

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